糖尿病食を利用しよう
日本には、糖尿病の患者さんが500万人もいると言われています。
そのうち、受診して治療をつづけているのは3分の1です。
残りの3分の2 の人たちは、自分が糖尿病患者とも知らずに、あるいは知っていながら、高血糖という大きな時限爆弾を抱えて生活しているのです。
実際に、糖尿病はふえています。
そして糖尿病は患者さん自身が気づきにくい病気であり、さらに完治がむずかしい病気でもあります。
統計をみると、糖尿病患者は合併症や血管病などを起こして、ふつうの人よりも早く死亡しています。
それは糖尿病が「気づきにくく完治しにくい病気」であるからです。
このほど米国では、糖尿病の診断基準が厳しくなりました。
これも、見逃されていた、たくさんの「かくれ糖尿病患者」を見つけだし、適切な管理を行なうためです。
つまり、糖尿病の対策は寸予防しと「治療の継続」に尽きるのです。
日本人は現在、世界で最も長生きな民族の一つです。
1997年に発表された平均寿命は、100歳以上のお年寄りは8500名もいます。
そのうち約7000名は女性ですから、女性が長寿というのはやはり当たっています。
ところで、糖尿病をもっている人にかぎってみたとき、すべての日本人の平均と比べて寿命はどのくらい変わるでしょうか。
糖尿病患者の死因に関する全国的なアンケート調査が実施されました。
225 施設から得られた1万1648名のデータが集計され、例年発表されています。
このデータによれば糖尿病のある人の平均寿命は病気の人も健康な人もすべて含めた日本人全員の平均寿命より、糖尿病患者は男女とも短命であることがわかっています 。
糖尿病患者の死因のトップは血管障害で、全体の約4割を占めていました。
血管障害による死とは、糖尿病性腎症、虚血性心疾患(心筋梗塞などで脳血管障害(脳卒中) などによって死ぬことです 。
第2位はガンで約3割、第3位は感染症によるもので約1割でした。
この上位3位で死因の8 割を占めることになりますが、これらはいずれも合併症です。
つまり、糖尿病をもっていても、糖尿病が直接の原因となって死ぬということはほとんどない、ということなのです。
ちなみに、高血糖による糖尿病性昏睡によって死亡した例は、わずかに1.7 %にすぎませんでした。
糖尿病患者が早死なのは、糖尿病による合併症のせいであることが明らかです。
さらに、患者さんのなかでも短命だった人を調べてみると、血糖値のコントロールがうまくいってなかったケースが非常に多いこともわかっています。
その傾向は、とくに糖尿病性腎症で顕著に現れています 。
全体をみても、血糖コントロール不良群は血糖コントロール良好群に比べて約2.2歳も短命でした。
また、治療を途中で中断してしまう患者さんも、合併症を起こしやすいということがわかっています。
こうしてみていくと、私たちの血液中のブドウ糖濃度(血糖値) が高いということが、寿命を確実に縮めるような恐ろしい合併症をいかに引き起こすかがよくわかります。
糖尿病の恐ろしさが、ここにあります。
そして、なぜ糖尿病の治療を続けなければならないのか、どうして血糖値が上がらないように毎日の生活で根気よくコントロールしていかなければならないのか、答えもここにあります。
口渇、多飲、多尿、倦怠感など、よく知られている糖尿病の症状は、生活習慣を改善することによって通常は数週間で消えていきます。
すると患者さんは、「糖尿病が治ったと誤解し、生活を元に戻してしまいがちです。
しかし実際には、治ったわけではありません。
すぐにまた、血糖値は上がっていきます。
これが、数年後になって糖尿病性合併症をつくりあげる土台となってしまうのです。
健康で生き生きと長生きすることは、だれもがもった基本的な願いでしょう。
この願いを確実におびやかすのが、高血糖の状態を続けるということなのです。
それを避けるための治療であり、生活習慣の改善が必要なのです。
この大前提をしっかり頭にたたきこみ、何年たっても決して忘れないようにすることが、あなたの残りの人生を大きく左右することになります。
Yさん(男性) は、非常にエネルギッシュな感じの会社役員で、検診で高血糖が見つかり、それ以来糖尿病の治療を続けています。
Yさんはもともとアルコールが大好きで、大食漢です。
脂っこい食事をとりながら強いお酒をストレートで飲み、食後にデザートを平らげ、さらにまだブランデーを飲むといった剛の者でした。
高校まで柔道をやっていたそうですが、大学に入ってからはスポーツは何も手を付けず、現在は5 分でも歩くのを嫌がってタクシーをつかまえてしまうほど。
自分でもそれでいいのだと、割り切って生きています。
体型をみると、筋肉も骨も太くがっしりしていますが、それは非常に厚い脂肪層によっておおわれていることがひと目でわかります。
これなら、内臓脂肪も、そうとうため込んでいるはずです。
成人型糖尿病を引き起こす、典型的なスタイルといえるでしょう。
Yさんは糖尿病の発病以前からバリバリと仕事をするタイプで、健康のことなど振り返らずに生きてきたわけですが、それは糖尿病になってからも変わることはありませんでした。
なぜなら、血液中に糖分が多少多くても、本人にはほとんど自覚症状がないからです。
医師からは生活のコントロールの必要を告げられましたが、最初から、自分の食生活を180度転換させたうえ、運動までやるなどという考えは、Yさんには爪の先ほども思いつかなかったそうです。
「高血糖が悪いなら、薬で下げておけば問題ないんだろう」こんな調子です。
そういう感覚のまま、近くの医院から私たちの『 T メディカルクリニック』に紹介されてきました。
インスリン注射を続ける一方で、当クリニックでもトレーニングや栄養指導を受けましたが、実際の生活を改善させる気がきらきらないため、治療はなかなかうまくいきません。
血糖値は悪化をたどる一方でした。
2年ほど前から、急激にやせてきました。
そしてすでに糖尿病性腎症を併発していましたが、ほとんど腎不全に近い状態になって、とうとう人工透析に頼らざるをえなくなったのです。
血糖値は500mg/dlを超えることもありました。
Yさん自身は、いま結果的にとても後悔しています。
しかし残念ですが、こうなってしまっては、とりかえしがつかないのです。
Yさんは、自分自身の末路をずっと知っていたのかもしれません。
医師からはさんざん言われていたはずですから、そういうことは考えていたことでしょう。
しかし生活を変えることはできませんでした。
「自分なら変えられる」と考えている方はたくさんいると思いますが、糖尿病の血糖値コンロールを1ヵ月、3 ヵ月、半年、1年と続けていったとき、最初に決心したときと同じような気持ちをもちつづけ、やる気を失わずに、さらにコンスタントに3年、5年と続けていく自信があるかどうか。
そのときになってみなければ、わからないのではないでしょうか。
糖尿病の結末は、失明、人工透析、片足切断、早死にと恐ろしいものばかりです。
この過程を知りながらも、患者さんたちはなかなか最善の道をみずから歩むことができないのが現実です。
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